医用画像の利用
医用画像などの医療情報には、画像と医師の診断など、診断の証拠となる情報と診断が結び付いて入っているので、医療の発展に利用することのできる多くの情報が含まれています。
しかし、医療情報には多くの個人情報も含まれているので、個人情報を残したまま研究に利用することはできません。
研究に利用するためには個人情報を消す(匿名化する)必要があります。
DICOM画像に入る情報
医療機器や医療システムはDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)という規格をサポートしています。
医用画像の多くはDICOM規格に則って保存されています。
DICOM規格で定義されているDICOM画像には、撮影した画像のほか、属性が一緒に記録されます。
属性には、患者、検査、装置、画像に関する情報があります。
患者に関する情報には、患者名、身長、体重、生年月日、住所、電話番号、職業などを記録することができます。
病院等の施設では患者に関する情報として、診察や治療に必要な個人情報を記録することがあります。
DICOM規格での匿名化
DICOM規格には、匿名化についても記載されています。
Part 15 (Security and System Management Profiles)の附属書E(Attribute Confidentiality Profiles)に匿名化について書かれています。
基本アプリケーションレベル機密性プロファイル(Basic Application Level Confidentiality Profile:基本となる匿名化処理)と12個のオプション*1の組み合わせで匿名化を行います。
基本アプリケーションレベル機密性プロファイルでは、個人情報が含まれる可能性のある属性がほとんど削除されてしまいます。
匿名化後のDICOM画像の利用目的によっては、必要な情報も削除されてしまいます。
そのため、用途に応じて12個のオプションを組み合わせて追加し、必要な情報を残すようにしています。
たとえば、基本アプリケーションレベル機密性プロファイルでは、約600個の属性を削除しますが、その中には身長、体重などの患者の身体的特徴が含まれています。
研究の目的によっては、体重と身長などの患者の身体的特徴が必要なことがあります。
そのような場合は、Retain Patient Characteristics Option の追加によって、患者の身体的特徴を残すことができます。
どのオプションを追加したか分かるように使用したオプションは、De-identification Method Code Sequence(0012,0064)という属性に記録します。
このように、利用目的に応じてオプションを追加することによって、個人情報を保護しながら研究に利用できる医用画像を出力することができます。
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脚注
*1 12個のオプションは以下の通りです:
属性の内容を削除するオプション
- Clean Pixel Data Option (ピクセルデータ内の文字情報)
- Clean Recognizable Visual Features Option (ピクセルデータの顔など)
- Clean Graphics Option
- Clean Structured Content Option (構造化レポート)
- Clean Descriptors Option (説明文)
属性の内容を保持するオプション
- Retain Longitudinal Temporal Information With Full Dates Option (日時を保持)
- Retain Longitudinal Temporal Information With Modified Dates Option (日時を保持)
- Retain Patient Characteristics Option (患者の特徴を保持)
- Retain Device Identity Option (装置の識別情報を保持)
- Retain UIDs Option (UIDを保持)
- Retain Safe Private Option (安全なPrivate属性を保持)
- Retain Institution Identity Option (施設の識別情報を保持)
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